キノコ類の人工栽培には,鋸屑と米糠その他の栄養素を混合調製した培養基を用いている。これらの人工培養基はあらかじめ殺菌処理してから種菌を接種することが必要である。従来の加熱処理法は熱の伝導が不均一のため処理時間が長く,培養基が変質しやすいなどの欠点がある。そこで,本研究では加熱処理法に変わる電離放射線処理法を試みた。
すなわち,非照射区のオガクズ培養基ではヒラタヶ菌糸の生育は完全に阻害されるか若干認められる程度だった。0.5, 1.0, 2.0 Mradと照射された培養基では各線量区とも菌糸の生育は活発であり,20℃,約20日の培養でキノコ菌糸は培養基全面をおおった。そして加熱処理したものより菌糸の生育は活発だつた。オガクズ培養基の主要変敗菌はCitrobacterとFusariumであり,両菌種とも0.5 Mrad照射で殺菌され,照射後の残存フローラを構成するBacillusや酵母菌類の増殖はキノコ菌糸の生育に対し阻害作用を示さなかつた。