日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
園芸食品の硝酸・亜硝酸塩に関する研究
(第6報) カボチャ果実の硝酸塩含量の生育,貯蔵中の変化
畑 明美緒方 邦安
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1976 年 23 巻 6 号 p. 257-261

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抄録

日本種「小菊」および西洋種「近成えびす」カボチャについて硝酸塩含量と貯蔵中の変化について検討した。
(1)カボチャの硝酸塩量は日本種「小菊」で220ppm,西洋種「近成えびす」で280ppmと西洋種でやや多く,さきに報告したナス,ピーマン,メロン,イチゴに比べ果菜類のなかでは高含量を示すことを認めた。部位別硝酸含量分布は「小菊」の幼果(開花後10日,20日)では皮部に含量が高く果肉部が少なかったが,適熟果(開花後40日)では部位における硝酸含量の相違が少なくなった。「近成えびす」は適熟果のみについてみたところ,種子部は最も少なく,果肉,胎座部で多く,その含量差もなかった。
(2)カボチャ「小菊」の生育中の硝酸塩量は幼果期に高く,完熟期ではやや減少することを認めた。
(3)カボチャの生育期を4期に分けて採取し,果実を貯蔵(20℃)すると,幼果(開花後10日)では貯蔵中硝酸含量の減少はほとんどみられないのに対し,開花後20日以降の果実ではいずれも貯蔵中硝酸塩の著しい減少が認められた。硝酸塩が貯蔵中減少することは,日本種,西洋種共通してみられる現象で,とくに西洋種「近成えびす」では1カ月貯蔵(20℃)で約1/10にまで減少した。
(4)カボチャ果実の貯蔵中の窒素化合物の消長については,カボチャ果肉の全窒素に対する硝酸態窒素の割合が減少し,それに対応して蛋白態・アミノ態窒素が増加した。胎座部でも同様の傾向を認めた。このことから貯蔵中に硝酸態窒素が蛋白態・アミノ態窒素に移行し,そのため硝酸塩含量が減少するものと推察した。

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