日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
シロタモギタケの成分
食用キノコの成分に関する研究(第1報)
数野 千恵子三浦 洋
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1984 年 31 巻 10 号 p. 649-655

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抄録

シロタモギタケについては子実体の傘の直径が1cm以上のものと,それ未満のものとに分け,かつ傘,柄及び基部に分け,各部位別に水分,灰分,無機成分,粗脂肪,遊離脂肪酸,有機酸,遊離アミノ酸,糖アルコール及び単糖の調査を行った。
1. 水分は一株全体としての含量は89.2%で柄にやや多く,傘,基部にやや少ない傾向がみられた。
2. 灰分は一株全体としての含量は1.0%であり,傘にやや多く柄に少ない傾向がみられた。なお子実体の大きさによる差はみられなかった。
3. 無機成分はカリウムが100g中,339.8~604.5mgと最も多く,次いでリン,マグネシウム,ナトリウムが多く含有されていた。傘と柄を比較すると,これらの成分はいずれも傘の部分に明らかに多く含まれていた。
4. 粗脂肪量は一株全体としては100g中164mgであり,部位別では傘の部分に最も多く,次いで柄,基部の順であった。
5. 遊離脂肪酸はミリスチン酸,ペンタデカン酸,パルミチン酸,ヘプタデカン酸,ステアリン酸,オレイン酸,リノール酸が検出され,各部位共にリノール酸が最も多く,次いでパルミチン酸,ステアリン酸が多くそれらで90%以上を占めた。部位別による比較では傘に多く,かつ小さな子実体に多く含まれる傾向がみられた。
6. 有機酸はギ酸,酢酸,乳酸,シュウ酸,コハク酸フマル酸,リンゴ酸,ピログルタミン酸,クエン酸が検出された。リンゴ酸及びピログルタミン酸が多く,それらは柄に多く含有されていた。また大きな子実体に多く含有される傾向がみられた。
7. 遊離アミノ酸はオルニチン,アスパラギン酸,グルタミン酸が比較的多く含有され,味覚に関与する,アスパラギン酸,グルタミン酸は柄,かつ子実体の小さなものに多く含まれる傾向がみられた。
8. 糖アルコールはマンニトール及びグルシトールが検出された。マンニトールはグルシトールに比較して多く含有され,傘,柄及び基部と下部に行くに従い多くなる傾向がみられた。
9. 単糖はマンノースとグルコースが検出された。いずれの部位もグルコースが多く検出された。マンノースは傘,柄,基部と下部に行くに従い明らかに多くなる傾向を示した。

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