日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
担体結合法による固定化セルラーゼの調製とその安定性について
柏木 豊馬替 由美佐々木 堯
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1984 年 31 巻 2 号 p. 86-91

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抄録

Aspergillus nigerのセルラーゼをブロムシアンによって活性化したSepharose CL-6Bに固定化した。蛋白の90%以上が固定化され,セルラーゼ活性の24%が保持された。この固定化セルラーゼの性質を調べて,nativeセルラーゼと比較した。
(1) 固定化セルラーゼの活性のpH曲線は,nativeセルラーゼに比べて変化しなかった。しかし固定化セルラーゼはpH 2~8の範囲で安定となった。
(2) 固定化セルラーゼは熱安定性が向上し,pH 4,60℃, 1時間のインキュベートではカルボキシメチルセルロース(CMC)分解活性の90%を,pH 2, 50℃では60%の活性を維持した。
(3) pH 2, 25℃で8日間保存した後の残存活性は50%であった。
(4) 固定化セルラーゼからの酵素の流出はなく,くり返し15回の反応を行っても1回目の80%の活性を維持した。
(5) 固定化セルラーゼによるCMCの加水分解物のペーパークロマトグラフィーから,反応生成物はnativeセルラーゼ同様グルコースであることが認められた。
本研究にあたり,基質CMCサンプルを供与された第一工業製薬株式会社に感謝いたします。なお,本研究は,農林水産省技術会議事務局バイオマスプロジェクト(82-V-1-6)の予算によって実施されたものである。

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