日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
凍結乾燥肉の水蒸気加熱処理による脂質安定化と水の挙動
凍結乾燥食品の保存に関する研究(第1報)
上原 康忠日吉 明高野 克己鴨居 郁三小原 哲二郎
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1985 年 32 巻 10 号 p. 718-724

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抄録

凍結乾燥豚肉は多孔質であるため含有される脂質が急速に酸敗するが,これを100℃で湿熱処理を行ったところ,抗酸化性が発現し,特に60分処理では約75日間脂質の酸敗が起らなかった。この原因について,含有されている水の挙動に主眼をおいて検討し,次の結果を得た。
(1) 酸素の吸収性は湿熱処理15, 30, 60分の順に低下し,90分では逆に無処理と同程度に上昇した。
(2) 水分は湿熱処理時間が長くなるにしたがって増加し,90分以降は約5%で平衡状態になった。Awの変動傾向も水分のそれとほぼ同様であった。
(3) 湿熱処理を行った試料の水分収着等温線では無処理よりも水の収着性が低下した。また,各湿熱処理試料間においても等温線に処理時間の差がうかがえた。単分子層水分量及び表面積は湿熱処理時間が長くなるにしたがってそれぞれ低下,縮減したが90分処理では逆に増大した。脂質が最も安定であった60分処理は表面積が最小で,単分子層水分量は2.75%であったが,水分は4.20%とかなり多かった。
(4) 不凍水分量も湿熱処理時間が長くなるにしたがって増加し,その一部は脱水が困難な状態になっていることが推察された。
以上の結果から,湿熱処理によって生ずる抗酸化性は含有する水の量と存在状態及び表面積等に関係があり,60分の処理試料は脂質の安定にとって最も効果的な条件になっていることがわかった。

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