日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
温州ミカン果皮不溶性固形物のアスコルビン酸酸化酵素とその果実発育中の活性測定
差スペクトルに基礎を置く分光測光法によるアスコルビン酸の定量(第7報)
東野 哲三藤田 修二川崎 宏隆
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1985 年 32 巻 10 号 p. 738-745

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抄録

温州ミカンの幼果皮より0.1Mリン酸緩衝液の処理により不溶性固形物(PIS)を調製した。このPISに含まれるアスコルビン酸酸化酵素(AAO)の性質を明らかにするために,そのMcILVAINE緩衝液による酵素の可溶化を試みた。同緩衝液によるPISの抽出液にはAAO活性が検出され,同時にペクチンの溶出がみられた。また抽出処理後の沈澱物にもAAO活性が認められた。そこで,PISをMcILVAINE緩衝液の処理により可溶性酵素と不溶性酵素の画分に分画し,不溶性酵素については差スペクトル法を応用する不溶性AAO活性の測定法を設定し,いずれも酵素の性質を調査した。
その結果,可溶性酵素はpH 5.5付近に最適値を示すなど既報2)のミカン幼果の部分精製AAOと性質が一致した。一方,不溶性酵素は最適pHが6.5と高く,加熱に対してもやや安定であるなどオレンジやミカンのPIS1)4)の不溶性AAOと類似する性質がみられた。ついで温州ミカンの果実発育過程における可溶性AAOおよび不溶性AAOの活性変動を差スペクトル法により追跡した。両酵素とも果実発育の初期(6月下旬)には高いAAO活性を示したが,その後8月上旬まで減少し,それ以降も成熟に至るまで低レベルながら活性が認められた。さらにミカン幼果から不溶性酵素の粉末標品を調製し,その応用面として同標品を用いる差スペクトル法によるAsAの分析を試みた。

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© 社団法人 日本食品科学工学会
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