日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
ユズ,レモン果皮の色調とカロチノイド組成の季節的変化
近 雅代榛葉 良之助
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1987 年 34 巻 1 号 p. 28-35

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抄録

果皮色の異なるレモンとユズの色調およびカロチノイド組成の変化の違いを調べ両者の関係を検討した
.(1) 果皮の赤色度を表わすa値は,ユズにおいては緑色から黄色に変化する段階でマイナス(緑色)からプラス(赤色)に移行したが,レモンでは淡黄色に着色後も約1ケ月の間マイナス値を示した.a値とカロチノイド量との間には,カロチノイドが増加し始めてからユズでは0.955,レモンでは0.956の高い相関がみられた.しかしユズとレモン果汁の糖度計示度・酸比はa値が増加してもほとんど変化がなく,両者の間には生食用カンキツでみられた相関関係はみられなかった.
(2) ユズのクロロフィルは緑色時には多量存在していたが完熟時には完全に消失した.一方レモンにおいては緑色時にはユズの半量にも満たない程少量であったが,完熟時にはわずかではあるがクロロフィルが残存していた.
(3) ユズ,レモンともにカロチノイド量は果皮のクロロフィルが減少する間同様の減少傾向を示した.クロロフィルの消失後ユズのカロチノイドは急増傾向を示し,完熟時には緑色時の量より多くなった.レモンはユズと異なりクロロフィルの減少期間が長く,そのためカロチノイドの増加期間が短くなったので,完熟時のカロチノイド量は緑色時のカロチノイド量より少なかった.
(4) ユズのカロチノイド組成は緑色時にはD-H-DD型を示し,ハッサクの葉と果皮の緑色時の型と同じであった.変色時にはDD-D-DM型となり,黄橙色時にはDD-M-D型からDD-M-DM型に変化し,ハッサクの果皮の変化と似ていた.レモンではHの減少が少なく,DDの増加もなかったことから果皮が緑色から変色時までH-D-DD型が続いた.この型はハッサクの葉と果皮の新緑時の型と同じであった.その後H-DD-D型,H-M-DD型とHが一番多い型が続き,完熟時になってはじめてMがHを追い越してM-H-DD型となり,ユズとは異なった変化を示した.

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