日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
高速液体クロマトグラフィーによるそばルチンの定量
小原 忠彦大日方 洋村松 信之松橋 鉄治郎
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 36 巻 2 号 p. 114-120

詳細
抄録

そばに含まれるルチンを分離,定量する目的で,HPLCによる測定法の検討と,本測定法による各種そば粉,およびそば加工品中のルチンの測定法を行った.
(1) HPLC法による分析法の概略は下記の通りである.粉砕試料をメタノールで80℃, 60分間加熱還流抽出,フィルター濾過後, 20μlをHPLC分析に供した.カラムは, Nucleosil 7C18l8 (ナーゲル社),移動相は2.5%酢酸,メタノール,アセトニトリル(35:5:10)であった. HPLCでの測定時間は, 1検体約15分であった.
(2) 長野県内産そば種子(抜き実)中のルチンは平均15.56mg/100g (n=6)であった.ルチン含量の多いそば粉は,灰分やクロロフィルも多い傾向が認められた.
(3) 過熱水蒸気による気流式殺菌そば粉,およびγ線殺菌そば粉のルチン含量は,未処理のものと大差なかった.これらの処理に対しては安定であることが認められた.
(4) 各種のそば粉,およびそば加工品中のルチンの量を測定した結果,そば粉,乾そばともに試料による差の大きなことがわかった.蒸気加熱,あるいは妙煎された加工品(そば米やそば茶)では,ルチンの量は小さかった.
(5) そば種子中のルチンの分布については,胚乳部は少く,胚芽や果皮の甘皮部に多いことが認められた.
(6) 乾そばを「ゆでる」ことにより,ルチンは減少した.本試験の例では, 6分のゆで時間で約30%のルチンが消失した.

著者関連情報
© 社団法人 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top