日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
温和加熱が発酵漬物由来細菌の生育におよぼす影響
宮尾 茂雄小川 敏男
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1990 年 37 巻 6 号 p. 433-438

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抄録

発酵漬物の製造の際に原料野菜を湯に一定時間浸漬した後,乳酸発酵を行なわせる場合がある.そこで,その意義を知る目的から,発酵漬物から分離した細菌を対象に,温和加熱処理が細菌の死滅,細胞内成分の漏洩および漬物の発酵における亜硝酸の蓄積におよぼす影響について調べ,次の結果を得た.
(1) 原料野菜を50℃で温和加熱処理したところグラム陽性細菌と比較してグラム陰性細菌は死滅しやすい傾向が見られた.
(2) 発酵漬物由来細菌を対象に温和加熱処理を行なったところグラム陰性細菌のなかでもPseudomonasfluorescensが特に熱感受性が高く, 45℃, 15分の加熱処理で10-2に減少した.
(3) グラム陰性細菌は45℃の温和加熱処理で細胞内成分の漏洩が認められ,細胞膜の損傷やRNAの分解がおこっていることが推定された.しかし,グラム陽性細菌の漏洩はわずかであった.
(4) 温和加熱処理によってグラム陰性細菌の食塩耐性は低下した.
(5) 温和加熱処理は原料野菜に付着しているグラム陰性細菌の減少に対して効果があり,その後の発酵において亜硝酸の蓄積量は少なかった.

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© 社団法人 日本食品科学工学会
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