日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
醤油麹高温自己消化物を用いた醤油の大規模生産
佐野 芳仁伊東 成起村松 俊輔兎束 保之
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1993 年 40 巻 7 号 p. 519-524

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抄録

醤油麹を高温で自己消化させて得た加水分解物に食塩を溶解させて未発酵諸味を調製し,これに耐塩性乳酸菌(P. halophilus)および2種類の耐塩性酵母(Z. rouxii, C. versatilis)を接種して醤油製造を目的とする44klタンクを用いた発酵試験を行った.
発酵方法は,改変した1槽2段階発酵方式を用いた.そこでは食塩を約13% (w/v)含む未発酵諸味に乳酸菌P. halophilusと後熟酵母C. versatilisを同時に接種して, 30℃で14日間保持し,乳酸発酵を主体とする第1段階発酵が行われるようにした.第1段階の発酵が終了した諸味を2等分して,それぞれについて等量の新鮮な未発酵諸味を混合した.その混合諸味を食塩濃度が約15~16% (w/v)になるよう調製し, 28℃で45日間,主発酵酵母Z. rouxiiによるアルコール発酵を主体とした第2段階発酵に導いた.第2段階発酵終了後,25℃で30日間の調熟期間をとった.
諸味中で乳酸は順調に生成され,アルコール発酵は還元糖濃度が過度に減少する前に停止した.熟成香成分である4-エチルグアヤコール, 4-エチルフェノール, 2-フェニルエタノールが,第2段階発酵を終了した諸味濾液中(生揚げ)から検出され,成分バランスの良好な生揚げが3ヵ月で製造できた.
このように製造した生揚げの成分組成は,従来法によって製造された生揚げのそれと極めて近く,官能検査によっても両者を区別することができなかった.

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