日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
大豆リゾリン脂質と乳タンパクとの相互作用とそのエマルションへの影響
藤田 哲鈴木 篤志河合 仁
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1994 年 41 巻 12 号 p. 859-864

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抄録

食品O/Wエマルションの安定化のためには,タンパクと界面活性剤の間の質的・量的関係が最も重要な因子であることを,著者らは経験的に把握してきた.大豆リゾリン脂質や,リゾリン脂質と不飽和脂肪酸との混合物である大豆リン脂質のホスフォリパーゼA-2分解産物は,タンパクを含むエマルションの安定化に有用である.本報告では,pH中性領域で,界面活性剤としての大豆リゾリン脂質などとカゼインナトリウムの相互作用について検討した.中性脂質である大豆リゾボスファチジルコリンや非イオン界面活性剤のショ糖脂肪酸エステルでは,タンパク/界面活性剤間に結合が認められず,cmc以上の濃度ではタンパクは界面から完全に排除された.酸性の脂質である大豆リゾリン脂質では,タンパクとの複合体が形成された.タンパクへの酸性脂質の結合サイトがなくなり,さらに脂質(界面活性剤)の量が増加するとタンパクは界面から完全に脱離した.
タンパクとリゾホスファチジルコリンまたは非イオン性界面活性剤からなるエマルション系では,タンパクに対する界面活性剤比率が高まるとエマルションの安定性が低下する.しかし,タンパクと大豆リゾリン脂質のような酸性脂質を含むpH中性のエマルション系では,タンパクに結合した界面活性剤量が適当であり,タンパクが疎水性を増し,そのアシル基でタンパクが油水界面に強固に吸着されることで,エマルションはより安定性を増すものと考えた.

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