トマトジュースの逆浸透濃縮における濃縮装置の殺菌方法に関して,汚染菌の耐熱性と膜の耐熱性から検討を行った.汚染菌の耐熱性はD60=15秒,Z=6.6℃であった.膜の耐熱性は透過流束と食塩保持率で評価したところ,60℃以下の処理では,ほとんど変化は認められなかった.しかし,80℃の温水で処理すると,熱収縮と圧密化現象が認められ,20分間に,透過流束が約30%低下するとともに,食塩保持率が約8%増加した.20分以後の変化は非常に緩やかであった.工業的規模の装置を用いて逆浸透濃縮を行い,温水(80℃)と殺菌剤の殺菌効果について比較検討を行った.その結果,殺菌剤の場合には濃縮開始直後の濃縮物中の一般生菌数は10102cells/mlであり,温水では100cells/mlであった.また,濃縮物に変敗臭が認められる時の一般生菌数である105cells/mlに達するまでの濃縮時間は,殺菌剤を用いた場合では12時間であったが,温水を用いた場合は約3倍の36時間であった.従って,温水殺菌は殺菌剤による殺菌よりも優れており,工業的規模の逆浸透濃縮装置の殺菌に対して,十分に利用可能であることが示唆された.