日本食品科学工学会誌
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ホエータンパク質分離物の加熱凝集性に及ぼす減圧高温予備加熱の影響
藤野 博史六車 三治男森 和彦津江野 大輔笹木 明弘伊藤 肇躬大橋 登美男
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1995 年 42 巻 10 号 p. 756-761

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抄録

WPIの加熱凝集温度を肉加工の加熱処理条件に近付ける目的で,WPIに減圧状態で予備的な高温加熱処理(予備加熱と略)を実施し,その予備加熱WPIの熱凝集性に及ぼす影響を検討した.その結果,次のことが明らかになった.
(1) 直線的温度上昇法により予備加熱WPIの濁度変化を検討したところ120℃, 1時間の予備加熱により最大濁度発生時の温度がわずかに低下した.
(2) SDS-PAGEにより分析したところ,予備加熱により高分子量のブロードなバンドやサンプル濃縮用ゲルに進入できないバンドも認められた.またβ-Lgがα-Laよりも予備加熱により変性しやすいことが明らかになった.
(3) DSC分析により予備加熱によってWPIの吸熱ピークがわずかに高くなり(72.5→74.2℃),エンタルピーが半分に減少し,予備加熱によりタンパク質の変性が進んでいることが推察された.
(4) 200mM NaClの添加により濁度上昇開始温度が約20℃も高温側にシフトしたが,120℃,1時間の予備加熱により,濁度上昇開始温度は60℃,最大濁度発生時の温度は約67℃を示すまで低下することが認められた.また,Ca2+を添加することにより,さらに予備加熱WPIの熱凝集温度を低下させることが明らかになった.

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