日本食品科学工学会誌
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ダッタンそば(Fagopyrum tataricum)の苦味の特性とその除去
川上 晃茅原 紘氏原 暉男
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1995 年 42 巻 11 号 p. 892-898

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抄録

ダッタンそば粉中の苦味成分の特性および除去方法を検討した.その結果,ダッタンそばを苦味のない食材として利用するためには(1)1番粉を利用する.(2)エタノール水溶液,アセトン水溶液(特に75%(v/v)エタノール水溶液)による洗浄を行う.(3)ダッタンそば粉を70℃以上に加熱処理する.以上の方法が有効であることがわかった.ここで,ルチンの摂取を目的としてダッタンそば粉を摂取する場合,ルチン含有量の少ない1番粉は適さないと考えられる.そのためダッタンそば粉に(2)・(3)の処理を加えるのが苦味除去に有効であると思われた.明らかにした苦味成分のうち,ケルセチンはルチンの加水分解によって生じる.この加水分解反応を防ぐのに有効とされる70℃以上の加熱処理は,苦味物質ケルセチンやF3の産生も防ぐため,苦味除去の観点からも有用である.75%(v/v)エタノール水溶液による洗浄処理ではルチンは損なわれず,ケルセチンとタンニンのみを除去可能である.そばタンニンは,タンパク質の消化吸収を妨げる原因となると考えられており,その除去はそばの消化吸収性の促進につながると考えられる.最後に,ダッタンそばの苦味成分としてケルセチンおよびF3の存在を明らかにした.しかしながら,F3の構造や別の苦味画分F4の諸物性について,今後の研究の進展を期待している.

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