日本食品科学工学会誌
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酵素反応とクーロメトリーを組み合わせた食品中のグルコース,フルクトース及びシュクロースの簡易迅速定量法の開発
梶野 和代恵美須屋 廣昭古川 宏深谷 正裕秋田 澄男川村 吉也内山 俊一
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1995 年 42 巻 3 号 p. 169-175

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抄録

キノン依存性脱水素酵素反応と自己駆動型クーロメトリーを組み合わせた新規なD-グルコース,D-フルクトースおよびシュクロースの迅速定量方法の食品中の糖濃度測定への適用性を検討した.
(1) 標準液を用いて定量性と繰り返し測定精度を検討した.Q0を含む50mMリン酸緩衝液(pH 6.5)に,D-グルコース標準液とキノン依存性グルコース脱水素酵素溶液を混合し,室温で15分間放置して酵素反応させた後,酵素反応の結果生じた還元型Q0の量を自己駆動型クーロメトリーで電気量として測定した.D-グルコース濃度0.1-6% (w/v)の範囲で,自己駆動型クーロメトリーでの測定放電電気量は,試料中のD-グルコース濃度と相関していた(r=0.9995).グルコース脱水素酵素の代わりに,フルクトース脱水素酵素を使用した場合には,D-フルクトースの定量が可能で,相関係数はr=0.9999であった.グルコース脱水素酵素とインベルターゼを試料に同時に作用させることでシュクロースの定量も可能であった(r=0.9999).いずれの糖においても,自己駆動型クーロメトリーでの実測放電電気量は理論放電量と一致し,無校正で定量が可能であった.繰り返し測定時の変動係数は,約1-2%であった.自己駆動型クーロメーターでの測定時間は,1-5分であった.
(2) 各種市販食品中のD-グルコース,D-フルクトース,シュクロースを本法で測定し,高速液体クロマトグラフィー及び酵素法と比較した結果,いずれの糖の分析においても本法と高い相関性があることが分かった.また,連続測定したときの変動係数(CV)は,2%程度であった.また,本法では,食品の甘味度と関係の深いD-グルコース,D-フルクトース,シュクロース量の合計量を簡便迅速に測定でき,3つの糖の合計量はソモギ法の分析値と良く一致した(r=0.9983).

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