日本食品科学工学会誌
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食品中のアルミニウムと人胃のpH条件下でのイオン化
福島 正子谷村 顕雄
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1995 年 42 巻 8 号 p. 543-547

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抄録

アルミニウムの体内吸収および蓄積の可能性をしらべるため,食品中のアルミニウムの定量とその人胃のpH条件でのイオン化率を測定した.用いた試料は市販の野菜,果実,きのこ類およびヒジキなどの22種とし,これらの食品を水道水と蒸留水で洗浄した後細断またはすりおろして凍結乾燥した.この凍結乾燥試料を湿式分解しフレームレス原子吸光分光光度計でアルミニウム量を測定した.また同乾燥試料を蒸留水又はpH 2の塩酸酸性下で1または3時間振盪した後吸引ろ過し,ろ液中のアルミニウムイオン量をクロムアズロールS吸光光度法で測定した.また全アルミニウム量とイオン量からイオン化率を求めた.
アルミニウム含有量はホウレンソウ,コマツナ,シュンギクの有色葉菜に多くそれぞれ乾燥物1gあたり687, 222, 117μgと高い値を示した.海の植物であるヒジキには,乾燥物1gに201μg含まれていた.果実類ではキーウィフルーツが22μgと最も高く,他の果実の3-4倍のアルミニウム値を示した.
アルミニウムイオン化率はコマツナ,ホウレンソウ,シュンギクにおいて低く,なかでもコマツナはpH 2の塩酸酸性下で3時間振り混ぜてもイオン化率は12%と極めて低かった.それに対してキュウリ,タマネギは塩酸溶液において80-100%と高いイオン化率を示した.果実類ではスイカがpH 2で100%近い値であったが,その他の果実ではほぼ50%以下のイオン化率だった.

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