日本食品科学工学会誌
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グルテンドウの形成と焼麩の比容積
焼麩の製造に関する基礎的研究(第3報)
村瀬 誠水谷 哲也杉本 勝之
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1996 年 43 巻 10 号 p. 1146-1151

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抄録

グルテンドウの形成と焼麩の比容積との関係について検討した.混練時間が短いとグルテンドウの形成が不完全であるために焼麩は膨化せず,一定時間以上の混練が必要であることが分かった.最大の比容積を与えるよりも長時間混練を継続するとグルテンドウは洩糸性を示すなど取り扱いが困難になったが,比容積はほとんど影響を受けなかった.効率や作業性などから適正な混練時間を守ることが重要である.地引機の仕事量の観点から適正混練時間をみると最大の仕事量を過ぎたあたりに相当し,これはファリノグラフで観察される弱化の過程に入った段階であった.グルテンドウの微細構造を比較すると,混練時間が短い場合には繊維状のグルテンが分散しており,均一になっていない.地引機で最大の比容積が得られる3~5分間混練すると繊維状のグルテンは消失し,小麦でん粉の直径に相当する大きさの穴が整然と並び,グルテンドウが均一になっていることが確認できた.ところが混練時間が10分になると穴が乱れ,いったん形成されたグルテンが破壊され始めたと推察された.この状態はファリノグラフを使用して得られたグルテンドウでも類似していた.混練時間が短いグルテンドウから得た膨化物は床面からの立ち上がりや表皮部分の膨化状態が異常で適正時間混練したグルテンドウから得られた膨化物に比べると不規則であった.なお,ファリノグラフにより得たグルテンドウには気泡が多く,従ってそれから得た膨化物は空洞が多かった.

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