1996 年 43 巻 2 号 p. 130-135
加熱分離大豆タンパク質の冷蔵ゲル化に及ぼす塩類,酸化剤,還元剤および変性剤の影響を調べた.
1) 塩類は総じて冷蔵ゲル化を阻害し,その程度は塩を構成するカチオンもしくはアニオンの種類によって異なった.カチオンの場合,Li+<Na+<K+の順にゲル化を阻害した.アニオンの場合,ゲル強度の変化はみられなかったが,しなやかさの指標である変形率の変化はタンパク質問の相互作用におけるHofmeister順列に従うと考えられた.
2) 酸化剤は冷蔵ゲル化を阻害し,ゲル強度と変形率の低下を示した.これは加熱ゲルにおけるゲル強度の増大と相違した.
3) 還元剤は種類によってその作用が全く異なった.亜硝酸ナトリウムはほとんど冷蔵ゲル化に影響を及ぼさなかったのに対し,亜硫酸水素ナトリウムは大きくゲル化を阻害した.
4) ME, NEMは冷蔵ゲル化を大きく阻害したことからSS結合の大きな関与が,また,EG, Uによる阻害から水素結合や疎水結合の大きな関与が示唆された.
5) ECHおよびDOは冷蔵ゲル化に影響を与えなかったことからヘリックス形成の関与はないと考えられ,また,亜リン酸二ナトリウムはわずかの阻害がみられたが,塩結合はほとんど関与しないと推察された.