日本食品科学工学会誌
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アルギン酸カルシウムからのカルシウム脱離に及ぼす有機酸,食塩,アミノ酸および糖の影響
乾燥コンブの調味成分による軟化に関する研究(第4報)
中川 禎人奥田 弘枝
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1996 年 43 巻 3 号 p. 267-274

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抄録

アルギン酸カルシウムからのカルシウム脱離に及ぼす有機酸,食塩,アミノ酸および糖の影響について検討した.
(1) 調味成分の種類,濃度に関係なく,Ca-Algを0~90℃で浸漬すると,数分以内にカルシウムが急速に脱離した.
(2) 酢酸,乳酸,コハク酸,リンゴ酸,酒石酸,クエン酸,NaClおよびGlu-Naのカルシウム脱離率は,0.2Mまでは急速に,1Mまでは緩慢に増加し,1M以上で一定に達した.GlyおよびAlaの場合は,1Mまで緩慢に,Glyは1M以上で急速に増加した.
(3) 平衡に達したときの脱離率は,乳酸,リンゴ酸,酒石酸,クエン酸,NaClおよびGlu-Naでは90~100%,酢酸およびコハク酸では約65%であった.Sucと対照(水)の場合は5%以下であった.
(4) 低濃度域(0.4Mまで)での脱離速度は,酒石酸〓クエン酸>リンゴ酸>乳酸>Glu-Na>NaCl〓コハク酸>酢酸>Ala>Gly〓Sucであった.
(5) 脱離率変化に及ぼす浸漬温度の影響は,調味成分の種類に関係なく,濃度が高くなるにつれて大きくなったが,変化の度合いはそれほど大きくなかった.
(6) カルシウムイオンとの交換選択係数は,0.2Mまでにおいては有機酸の解離定数に比例した.Glu-Naの交換選択係数は,NaClより著しく大きかった.

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