日本食品科学工学会誌
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魚肉に臭素酸カリウムを添加して加熱した場合のエタナール生成原因物質の検討(I)
吉田 秋比古森田 茂斎藤 穣
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1996 年 43 巻 4 号 p. 374-381

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抄録

魚肉に臭素酸カリウムを添加して加熱した場合の工タナールの生成原因物質について検討したところ,次の結果を得た.
1) サバ肉に臭素酸カリウムを添加して加熱した場合,エタナールとアセトンの発生が見られた.過酸化水素を添加した場合では臭素酸カリウムより多くのエタナールとアセトンが発生した.次亜塩素酸ナトリウムを添加した場合ではエタナール,イソブタナールおよび2-メチルブタナールが発生した.
2) 白身魚,血合肉,鶏卵,牛乳では全くエタナールの発生がみられず,マイワシ,マグロ,ブリなどの赤身魚で多量の工タナールが発生した.
3) エタナールの発生はホモジネートのpHが7以下,加熱蒸留温度70℃以上で見られた.
4) エタナール生成原因物質は脂溶性物質ではなく,水溶性物質で赤身魚に多く含まれ,白身魚にはほとんど含まれていない物質であると考えられる.また,何らかの複数成分の存在がカルボニル生成の必要条件であると考えられる.
5) 試験した香辛料すべてがエタナールの発生を大きく抑制した.
6) 亜硫酸ナトリウム,亜硫酸水素ナトリウム,マルトールなどの還元性物質はエタナールの発生を抑制し,酸化防止剤,サイクロデキストリン,アミノカルボニル反応防止剤は抑制効果を示さず,エタナールの生成はアミノカルボニル反応の際に起こるストレッカー分解によるものではないことが明らかになった.アスコルビン酸はエタナールの発生を大きく促進した.

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