日本食品科学工学会誌
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ゴマ種子焙煎条件が油の酸化安定性に及ぼす影響
油糧種子焙煎により生成する抗酸化成分に関する研究(第1報)
小泉 幸道福田 靖子並木 満夫
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1996 年 43 巻 6 号 p. 689-694

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抄録

1) 熱源に遠赤外線を用い,撹拌しつつ種子を均一に(±5℃の範囲で)一定条件で加熱することのできる実験用焙煎装置を作成した.
2) この装置を用い,ゴマ種子を,170~175℃ (60, 90, 120, 160分),180~185℃ (10, 15, 30, 45, 60, 100分),190~195℃ (2, 5, 10, 15分),200~205℃ (2, 5分)の各条件で焙煎し,搾油した.その試料について褐変度(420nmの吸光度)と抗酸化性(重量法)を調べた.その結果,焙煎温度が170~175℃では長時間焙煎しても褐変度,抗酸化性ともに30分以降は平衡に達した.焙煎時間よりも温度の影響が大きく,特に,190℃以上で短時間でも急激に褐変度,抗酸化性とも上昇した.今回の条件では200-205℃, 5分の焙煎が褐変度,抗酸化性とも最も高い値を示した.
3) ゴマ種子焙煎時にセサモリンの分解で生成するセサモールは,焙煎温度の上昇とともに増加し,200℃ 5分で13.02mg/100g生成した.トコフェロールは焙煎温度による影響はあまりなく,高温で若干分解される傾向であった.
4) 焙煎により生成したセサモールを150℃, 30分の低温焙煎油に添加して抗酸化試験を行った結果,高温焙煎時に生成するセサモール量(16mg/100g)を添加した場合も,高温焙煎油の極めて高い抗酸化性は得られなかった.

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