日本食品科学工学会誌
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カマンベールチーズ熟成中におけるタンパク質分解
岩澤 秀樹平田 明弘木村 貞司山内 邦男
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1996 年 43 巻 6 号 p. 703-711

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抄録

カマンベールチーズは,熟成期間が20日前後と他のナチュラルチーズと比較してかなり短く,その間に顕著なタンパク質分解が進行する.本研究では,カマンベールチーズ熟成期間中に生成するカゼインの一次分解物および二次分解物の分析を行った.その結果次のことが明らかとなった.
1 水溶性窒素の定量を行った結果,全窒素量に対する水溶性窒素量の割合は熟成の進行につれて増加し,表面部に比べて中心部はいずれの期間においても少なかった.
2 ゲル電気泳動法で調べた結果,表面部のほうが中心部より低分子に分解されていた.特にαs1-カゼインは5日目に急速に分解した.10日目にはβ-カゼインがγ-カゼインに,αs1-カゼイン分解物がさらに低分子のペプチドの形に分解された.
3 遊離アミノ酸の定量では,表面部,中心部ともに熟成の進行とともに増加した.
4 ペプチド分析では,熟成が進むにつれてペプチドのピーク数が多くなった.また,ピークの数は表面部に比べて中心部がいずれの熟成期間においても少なかった.
5 カマンベールチーズの熟成は初期にはチーズ全体で,末期にはカビの生育に伴ってチーズ外側から内側へとタンパク分解が行われた.

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© 社団法人 日本食品科学工学会
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