日本食品科学工学会誌
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曲げ荷重により切断した凍結魚肉の切断面角度に及ぼす筋線維配向角度の影響
岡本 清羽倉 義雄鈴木 寛一久保田 清
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1996 年 43 巻 9 号 p. 1035-1041

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抄録

筆者らは凍結した食品材料を鋸を用いずに切断する方法(低温切断法)を提案し,さらにこの方法を凍結魚肉の切断に応用することを目指している.本報告では,-70℃, -100℃, -130℃において任意の筋線維配向角度θfを持つキハダマグロ試験片の曲げ切断試験を行い,破断面角度θsに与えるθfの影響について検討を行った.
切断試験の結果,以下のことが明らかとなった.(1)凍結魚肉を曲げ荷重により切断した場合,切断様式は筋線維の配向角度θfに依存し,0°≦θf≦30°では「筋線維を断ち切る切断」が起こり,40°≦θf≦90°では「筋線維に沿った切断」が起こることが明らかとなった.また,30°≦θf≦40°付近では,2つの切断様式が同時に現われることが明らかとなった.(2)「筋線維を断ち切る切断」が起こる場合には,-70℃に凍結して切断することにより切断面が直角になる可能性が高くなることが明らかとなった.また「筋線維に沿った切断」が起こる場合には,凍結温度にかかわらずθf=90°になるように設定して曲げ荷重を加えることにより,安定して直角に切断できることが示唆された.(3)実際の凍結マグロを低温切断法でチャンク状に切断する際に,切断面が直角になる可能性について,文献値に基づき検討を行った.この際筋線維配向角度θfが最大となるマグロ体表面付近におけるθfが切断の可否を決定すると仮定した.その結果,メバチマグロ,ミナミマグロ,キハダマグロ,ビンナガマグロとも,θfは20°以下となり,この場合赤身肉に「筋線維を断ち切る切断」が起こると考えられ,表皮,骨の影響を除いて考えれば,直角に近い切り口でマグロを輪切りにできる可能性が高いことが示唆された.

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