日本食品科学工学会誌
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中空糸膜モジュールを用いた濃縮菌体の一部排出培養法による食酢の連続生産
玉井 正弘丸子 修門 隆興
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1997 年 44 巻 2 号 p. 126-132

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抄録

中空糸膜モジュールを用いた酢酸の連続生産において,酢酸濃度が10%(w/v)の食酢の効率的な生産と共に菌体濃度の過度の増加を抑制することを目的に,中空糸膜モジュールを用いて濃縮した菌体の一部を培養液と共に発酵槽外に排出する一部排出培養法について検討した.
(1) 希釈率が約0.07h-1以上では,排出比が高くなるにつれて菌体濃度の変動幅は大きくなったが,菌体濃度はほぼ一定値となり,菌体濃度と排出比との間には次式に示すような直線関係が存在し,菌体濃度は排出比により制御が可能であることが認められた.
Cx=0.117(1/θ)+0.0551
(2) 本研究における酢酸生産速度の最大値は,16.6g-acetic acid/(l・h)(膜モジュールを装着していない場合の4.4倍)であった.酢酸生産速度に対する菌体の増殖に由来する酢酸生産速度と維持代謝に由来する酢酸生産速度の比率は,希釈率が高くなるに従って増殖に由来するものが高くなった.本システムにおける高い酢酸生産速度の達成は,高い増殖速度の維持が大きく貢献していることが認められた.
(3) 希釈率を0.0769h-1,θを0.2の条件下で80日間培養を行い,酢酸と残存エタノール濃度が平均で105.1g-acetic acid/lと4.5g-ethanol/l(0.57%(v/v))の食酢を平均で8.1g-acetic acid/(l・h)の酢酸生産速度と13.8g-acetic acid/(g-dry cell・h)の酢酸比生産速度と0.95g-acetic acid/1.304g-consumed ethanolの収率で安定に生産できた.

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