日本食品科学工学会誌
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揚げ物調理時に発生する泡膜の安定化機構の解析
安永 浩一戸井 学岡 毅沖坂 浩一横道 秀季安川 拓次
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1997 年 44 巻 6 号 p. 400-406

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抄録

家庭で,揚げ物調理を行う際に発生する泡の原因および安定化機構の解析を行った.泡立ちの程度は,ポテトスライスを揚げ,その上に円柱管をかぶせた時に上がってくる泡の高さから評価した.小麦粉,卵,パン粉で処理したものを揚げると,著しく泡立つようになる.この時の泡に含有される成分の分析から,油中のリン脂質と糖脂質が増加するほど,泡立ちやすくなることが明らかになった.すなわち,卵および小麦粉から抽出されるリン脂質および糖脂質が主な原因であると考えられる.
蛍光プローブの付いたリン脂質を油に添加した実験から,リン脂質が油と水の界面に吸着し,集合体を形成することが示された.泡膜の電子顕微鏡観察から,極性脂質の多層構造の存在が認められた.これらのことから,油表面に発生した泡が,冷却され,水が析出する際に,極性脂質が吸着し,多層膜ラメラ型構造を形成して,泡膜が安定化されることが,泡立ちの原因と推定された.

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