日本食品科学工学会誌
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温水抽出物による焼海苔の呈味性評価
荒木 繁泉野 友香桜井 武麿高橋 幸資
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1997 年 44 巻 6 号 p. 430-437

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抄録

焼海苔の呈味性の良否を評価するための旨味の数値化への手掛かりを得るたあに,焼海苔の呈味成分としてアミノ酸と5'-ヌクレオチド類に着目し,その含量と食味テストによる味の評価値との関連性を調べた.なお,この報告で用いた試料は,九州有明海地区で生産された乾海苔で,これを培焼して焼海苔にしたものである.
呈味成分の抽出には,焼海苔を食する状態により近似させるために,35℃の温水に短時間(30秒間)浸漬した後,その抽出液に溶出する呈味成分の量をHPLCで定量した.また,グルタミン酸と5'-イノシン酸との間には旨味の相乗効果が知られていることから,両者の積を求め,その値を1000で除した値を“味の指数”として,食味テストの評価値(旨味の評価値)との関係を調べた.
その結果,温水抽出により焼海苔の呈味性を示す遊離アミノ酸と5'-ヌクレオチドが容易に検出された.その中で,5'-イノシン酸と旨味の評価値との間には,r=0.839という高い相関関係がみられたが,その他の個々の呈味成分との間には明らかな相関はみられなかった.また味の指数と旨味の評価値との間には,r=0.873という高い相関がみられた.このことは焼海苔の旨味が主としてグルタミン酸と5'-イノシン酸の相乗効果によることを強く示唆している,これにより,焼海苔の旨味の呈味性を数値化するための有力な手掛かりが得られた.

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