日本食品科学工学会誌
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包括固定化酵母を用いた繰り返し回分発酵による発酵風味液の生産
玉井 正弘三浦 芳助丸本 進
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1997 年 44 巻 7 号 p. 494-500

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抄録

パンの風味を改善するための発酵風味液の効率的生産を目的として,アルギン酸カルシウム包括固定化酵母を用いたバイオリアクターによる繰り返し回分発酵について検討した.
(1) 培養温度の低下により回分培養終了時のエタノール濃度は低下したが,2つの培地組成及び培養温度でも安定に発酵風味液を生産できた.
(2) 発酵風味液中の細菌数は,繰り返し回分培養の回数を重ねるにつれて次第に増加し,12日目以降は107(CFU/ml)に達した.
(3) 固定化酵母を10℃で16日間保存した後でも,保存前と同様に発酵風味液の生産が可能であった.
(4) 風味液中より分離した細菌は,0.25%(w/v)の乳酸で増殖を停止できた.この乳酸濃度では供試酵母の増殖には影響を与えなかった.
(5) 繰り返し回分発酵において培養開始時に乳酸を0.4%(w/v)添加することにより,風味液中の細菌数は急速に低下し,ほぼ0になった.その後,0.2%(w/v)添加することにより細菌数の増加を抑制することができた.乳酸の添加を停止すると細菌数は増加する傾向にあった.
(6) 風味液中の香気成分濃度は,比較的安定していたが,有機酸濃度はかなり変動した.

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