日本食品科学工学会誌
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ユリ根中トリプシンインヒビターの精製とその性質
浅尾 俊夫堀口 美和寺田 慎子高橋 享子
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1998 年 45 巻 11 号 p. 663-670

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抄録

食用ユリ根中にはCM-Sepharose CL-6Bに吸着されないトリプシンインヒビター(LTI-I)と吸着されるトリプシンインヒビター(LTI-II, LTI-III)が存在した.未吸着部のトリプシンインヒビターをCM-SepharoseCL-6Bで再クロマトグラフィー後,さらにDEAE-Sepharose CL-6Bにてイオン交換クロマトグラフィーを行い,阻害活性分画部のみをさらにHPLCにて精製し,SDS-PAGEにて均一であることを確認した.均一トリプシンインヒビターをLTI-I-1とした.LTI-I-1は分子量23000,pI 4.7,トリプシンとの阻害対応モル比は1であった.LTI-I-1のアミノ酸組成から,1分子中に2つのジスルフィド結合が存在した.N末端アミノ酸25残基とC末端アミノ酸3残基を同定した.LTI-I-1の反応部位アミノ酸はアルギニンであった.また,LTI-I-1はキモトリプシンに対しても弱い阻害活性を示したが,エラスターゼおよびズブチリシンに対しては全く阻害反応を示さなかった.食用ユリ根中に存在するトリプシンインヒビター・LTI-I-1は分子量とジスルフィド結合数,さらにFASTAデータバンクの結果からKunitz型トリプシンインヒビターファミリーに属すると推定した.

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