日本食品科学工学会誌
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絹糸から調製したフィブロイン溶液の起泡特性とスポンジケーキへの利用
平尾 和子木村 由里子五十嵐 喜治
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1998 年 45 巻 11 号 p. 692-699

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抄録

セレシンを除去した絹糸を83-87℃, 8時間塩化カルシウムで溶解し,透析を行って塩化カルシウムを除去した.次いでpH2.8に調整後,4-5日間再度透析して得られるフィブロイン溶液,またpH調整に先立って凍結・解凍し,以降同様にして調整して得られるフィブロイン溶液の起泡特性について検討した.またフィブロイン起泡を使用して製造したスポンジケーキの物性および官能評価等についても合わせて検討した.
(1) フィブロイン溶液の凍結・解凍操作はフィブロイン溶液の起泡特性を改善し,解凍フィブロイン溶液のオーバーランは,未凍結のものを使用した場合に比べて高かった.解凍フィブロイン溶液を使用して調整したフィブロイン起泡からの離漿量は,撹拌時間が増すほど少なくなった.また離漿量は起泡調製時の温度がフィブロインの変性・凝固点に近い55℃において,45℃以下における場合よりも少なかった.
(2) 解凍フィブロイン溶液の起泡特性は卵黄の添加で低下したが,デキストリン,砂糖,酒石酸カリウム,食塩のような食品添加物,あるいは薬品の添加で改善された.特にデキストリンが最も効果的であった.
(3) フィブロイン起泡とベーキングパウダーを使用して製造したスポンジケーキは,卵白を用いて製造したものに比べ,物性値は劣っていたが,官能評価においては,色調,硬さ,弾力性,口どけ,甘さおよび総合評価の項目において有意に好まれた.

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