日本食品科学工学会誌
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18SリボソームRNAによる獣肉,鳥肉,魚肉の特定
松永 孝光柴田 清弘山田 順一新村 裕千国 幸一
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1998 年 45 巻 12 号 p. 719-723

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抄録

食肉,食肉製品の原料肉に使用される獣肉,鳥肉,魚肉の識別を行う目的で,18SリボソームRNA遺伝子を増幅するプライマーRR-1(5'-AAACTGCGAATGGCTCATTAAATCAGTT-3')とRR-6(5'-ACCATCGAAAGTTGATAGGGCAGA-3')を設計した.9種類の獣肉,8種類の鳥肉,2種類の魚肉,ワニ及びカエルから抽出したDNAを鋳型として,95℃で30秒間,60℃で30秒間,76℃で30秒間のサイクルを35回繰り返してPCRを行った.これらの動物から増幅されたPCR産物の大きさはカンガルーで317bp,その他の獣肉は293bp前後,鳥肉はすべて254bp前後,魚肉は267bp前後,ワニは252bp,カエルは270bpであり,PCR産物の大きさの違いを利用して獣肉から鳥肉,魚肉を識別することが可能であった.しかも,カンガルーと他の動物との識別も可能であった.カンガルー,ウシ,ワニ.シチメンチョウ,カエル,スケソウダラのPCR産物の塩基配列を決定した結果,動物種類によって塩基配列の長さが異なる原因は18SリボソームRNA遺伝子のループ10領域の違いによることがわかった.この方法をいくつかの食肉製品について適用したところ,獣肉,鳥肉,魚肉の存在を1度のPCR分析で識別することが可能であった.

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