日本食品科学工学会誌
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きのこAgaricus blazei由来高分子多糖体のマウス経口投与による抗腫瘍活性
藤宮 芳章小堀 英和大志万 浩一曾田 良海老名 卓三郎
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1998 年 45 巻 4 号 p. 246-252

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抄録

アガリクス子実体のエタノール抽出残渣(フラクション1)を熱抽出した後(フラクション2),その残渣を蓚酸アンモニウム溶液で抽出し,蓚酸アンモニウム可溶性(フラクション3)画分,不溶性の画分(フラクション4)を分離し,これらの画分を,マウスの右および左下腹部にMeth-A腫瘍を接種するdouble-grafted tumor systemで抗腫瘍活性を測定した.
(1) フラクション3に最も強い抗腫瘍活性が認められ,直接投与した右側腫瘍が劇的に縮小したばかりか投与しなかった左側腫瘍も縮小した.左側腫瘍は免疫機能増強により縮小したものかあるいは血流に乗り左腫瘍に達したと推定された)
(2) これらの分画を固形飼料に混合し,腫瘍接種前4-18日から自由に摂取させ,single-tumor systemで吟味した結果,どの分画でも全く抗腫瘍効果が認められなかった.
(3) 最も抗腫瘍活性の強いフラクション3を塩酸で加水分解するとその分画は可溶性となったので,singletumor systemを用い,ゾンデで生理食塩水に溶解し,マウス胃内に強制投与した.その結果,腫瘍接種4日前に投与した動物群にのみ明確な抗腫瘍活性が認められ,腫瘍接種と同時か接種後に同フラクションを経口投与した動物群には有意の抗腫瘍活性が認められなかった.
(4) これらの実験的事実は,担子菌子実体を摂取することにより癌予防を期待するものであれば,子実体を塩酸などの酸を用いた加水分解による処理が必要になる事を示している.(5) ATFの静注単回投与によって全く副作用は認められなかったことから,その抽出物の安全性をも保証している.

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