日本食品科学工学会誌
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スポンジケーキの焼成過程に及ぼす糖代替の影
井川 佳子
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1998 年 45 巻 6 号 p. 357-363

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抄録

基本的な単糖1種,二糖類2種,糖アルコール4種を単独と,2種ずつ組み合わせた計28種の糖及びショ糖を用いてスポンジケーキを調製し,糖の代替がバッターの性質や焼成過程の諸現象等に与える影響を明らかにしようと試みた.その結果,次のようなことが認められた.
(1) バッター比重はラクトース単独を除き0.52以下と小さく,ケーキ比容積との間に負の相関が見られた.
(2) バッターのDSC測定による熱変性ピーク温度(Tp)は79.2~93.2℃に分布し,バッターの構造変化に対応する温度と考えられた.
(3) ケーキ生地の昇温速度,最高到達温度,ケーキの収縮開始時間は,いずれもTpとの間に相関関係があった.
(4) ケーキ中央部のスポンジ構造形成期間(収縮開始時間とバッターTpに対応する時間との差)とTpとの間には直線関係(r=0.96)があり,この関係式から良好なスポンジ構造形成のTp限界温度(94.2℃)を推定した.
(5) Tpとケーキ比容積の関係は,88℃付近に最大値を持つような2次方程式で近似(r=0.93)できた.
(6) グルコースやマルトースを含むケーキはかたさ及び回復率が大きくなり,ソルビトール,マルチトール,ラクチトールを含むケーキは,柔らかく回復率が小さくなる傾向を示した.
以上のことから,Tpの変化が焼成中のケーキ生地の温度履歴を左右し,蒸気圧やバッターの構造変化時期に影響を与える結果比容積が変化すること,Tpの調整によってケーキ比容積の調節が可能なことが示された.

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