日本食品科学工学会誌
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米飯1粒の多面的物性測定に基づく米の食味評価
岡留 博司豊島 英親須藤 充安東 郁男沼口 憲治堀末 登大坪 研一
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1998 年 45 巻 7 号 p. 398-407

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抄録

一般飯用米を対象にして,米飯1粒の多面的物性測定(低圧縮試験・高圧縮試験・積算加重試験)を行い,米飯物性と成分・官能検査項目との関連性を検討した.
(1) 供試した一般飯用米はタンパク質含量及びアミロース含量とも1992年産米よりも1993年産米の方が高い傾向を示した.官能検査における「総合評価」の高い米は官能検査の「軟らかさ」及び「粘り」の評価において,軟らかく,粘りがあり,「外観」の評価も良好であった.
(2) 低圧縮試験及び高圧縮試験によって一般飯用米の物性を測定した結果,一般飯用米の米飯物性の変異は新形質・系統試料米に比べると小さかった.
(3) 1992年産米17点を用いて物性測定項目と成分・官能検査項目との単相関を調べた結果,アミロース含量は変異が45%と小さいものの,高圧縮試験による全体の硬さと単相関が高かった.また,高圧縮試験よりも低圧縮試験の測定項目の方が官能検査項目との単相関が高かった.積算加重試験では弾性限界率よりも弾性限界距離の方が官能検査項目との単相関が高かった.
(4) 1992年産米を用いて米飯物性に基づく官能検査項目の推定式を作成した.その結果,3種類の物性試験の中では,低圧縮試験の推定式が全官能検査項目において重相関係数が最も高く,また1993年産米を未知試料として検定した場合にも「総合評価」及び「粘り」の重相関係数が最も高かった.
(5) 一般飯用米の官能評価による「粘り」を機器測定によって評価する場合には,低圧縮試験による米飯粒表層の2つの粘り指標の組み合わせが有効であることが示唆された.
以上のことから,一般飯用米の食味を推定する場合には,3種類の物性試験の中では低圧縮試験による推定式が最も妥当であり,また,官能検査に対応した一般飯用米の粘りを機器測定によって評価する場合には,低圧縮試験の粘りのピーク値-H1及び付着量L3の両指標の組み合わせが有効であることが明らかになった.

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