日本食品科学工学会誌
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温州ミカン缶詰製造工程および保存中の揮発性成分の変化
高橋 英史隅谷 栄伸稲田 有美子森 大蔵達家 清明
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1999 年 46 巻 2 号 p. 59-66

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抄録

温州ミカンの果皮,砂じょう,缶詰製造直後および保存中の缶詰の揮発性成分の変化を調べ,ミカン缶詰の香気について検討した.揮発性成分は減圧連続蒸留抽出法で調製し,キャピラリーカラムGC-MSで分析した.
揮発性成分含有量は果皮が1.36%,砂じょうが0.00038%であった.果皮の揮発性成分の99.5%はテルペノイド類であった.砂じょうの揮発性成分はテルペノイド類(60.7%),パラフィンワックス(28.0%),アルコール類(6.5%)およびアルデヒド類(0.9%)が主要成分であった.
オダーユニットの対数が正の値を示した成分は,砂じょうではMyrcene(0.3),Limonene(2.2),Linalool(0.8),Hexanal(0.2),(Z)-3-Hexena1(1.7)およびNonanal(0.2)であり,ミカン缶詰ではLimonene(1.3),Linalool(0.7)であった.
温州ミカン缶詰の香気に主として寄与する成分はテルペノイド類であり,ミカン様の香りのLimoneneと花・果実様の香りのLinaloolがミカン缶詰の香りに寄与していると考えられた.
缶詰加工によって,砂じょうの揮発性成分は量的および質的に変化がみられた.
ミカン缶詰の保存中における香気劣化は,ミカン果汁缶詰と比較するとほんの僅かであった.それには2つの理由が考えられる.1つは,ミカン缶詰の製造には通例白缶を使うので,メッキのスズと溶存酸素が反応し,缶詰製造後より缶内が還元状態になるためである.2つめは,ミカン缶詰は,ミカンの果皮を除去するため果皮油を含まない.そのため,テルペン系炭化水素の含有量が少なく,それらから水和により生成される異臭成分が極めて少量となるためである.

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