日本食品科学工学会誌
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膜乳化法によるファットスプレッドの調製およびその安定性の評価
外山 一吉浅野 祐三井原 啓一高橋 清孝土井 一慶
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1999 年 46 巻 5 号 p. 339-345

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抄録

(1) ファットスプレッドのような半固体状の乳化物であっても撹拌乳化で調製されたものより膜乳化によるもののほうが,冷蔵時では分散粒子径変化の点で安定であることが判明した.
(2) 凍結解凍時においても膜乳化法によるファットスプレッドのほうが撹拌乳化法によるものより安定である事が判明した.
(3) 撹拌乳化法で調製されたファットスプレッドでは油相部の結晶量が多いものほど顕著に,保存後3日から7日の間に分散粒子の細分化が観察され,油脂の結晶構造が分散粒子の存在状態に大きな影響を及ぼしていることが推察される.このことは,ファットスプレッドの白色度変化からも示唆された.
(4) 油相部の固体脂指数(SFI)は分散粒子が細分化されている期間においてもほぼ一定であるため,分散粒子の微細化は保存中における結晶量の増加によるものではないことが判明し,その原因としては油脂の結晶構造の変化によるものが考えられる.
(5) 膜乳化法によるファットスプレッドの白色度は撹拌乳化法のものよりも大きく,ファットスプレッドの白色度はその安定性を反映しているものと考えられる.
(6) 本結果より,ファットスプレッドにおいて膜乳化法で,従来法(撹拌乳化法)より安定なファットスプレッドを得ることができた.

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