1999 年 46 巻 7 号 p. 473-479
温州ミカン果汁から,β-クリプトキサンチンを0.67%含有するβ-クリプトキサンチン高含有粉末(CRP)を調製し,アゾキシメタン(AOM)で誘発したラットの大腸癌前駆病変(ACF)に対する抑制作用について検討した.ACFはAOMを実験開始1週間後より週1回計2回,雄F344ラットの体重1kg当たり20mg投与することにより誘発した.CRPは0.05%の濃度で食餌に混合し,実験開始時より4週間投与した.CRPの投与はACFの発生を04週の時点で20%(P<0.01),11週の時点で18%(P<0.005)抑制した.また,ラットのkg体重当たり0, 40, 200及び400mgのCRPを強制的に胃内投与して,glutathione S-transferase (GST)及びquinone reductase(QR)活性を測定した.CRPは,肝臓と大腸におけるGST及びQR活性を有意に増加させたことから,CRPのACF発生抑制作用の機序は,これら2量体酵素の誘導が考えられる.