日本食品科学工学会誌
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Aroma Extract Dilution Analysisによる殺菌牛乳の香気評価
岩附 慧二溝田 泰達久保田 哲夫西村 修増田 秀樹外山 一吉富田 守
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1999 年 46 巻 9 号 p. 587-597

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抄録

生乳,LTLT牛乳,HTST牛乳及びUHT牛乳を減圧蒸留し,得られた抽出液についてGC,GC-MS及びAEDAで香気成分を調べ,以下の結果を得た.
(1) 牛乳の香気成分として101成分が同定あるいは推定された.加熱の程度が強くなるにつれ,2-pentanone,2-heptanone,2-nonanone及び2-undecanoneの香気量が顕著に増加した.また,多くのピラジン類が新たに同定された.一方,hexanoic acid,octanoic acid及びdecanoic acidは他の香気成分に比べ各乳に共通して多く検出された.
(2) AEDAで,牛乳の匂いに関与する成分がガスクロマトグラム上の70ヶ所に認められた.このうち殺菌乳の匂いは加熱により変化した44ヶ所と加熱により変化しなかった26ヶ所で構成されていた.
(3) 加熱により,主に2,6-dimethylpyrazine,2-ethylpyrazine,2-nonanone,2-ethyl-3-methylpyrazine,methional,pentanoic acid,unknown compound (Kovats index 1747),unknown compound(Kovats index l757),benzothiazole及びvanillinの匂いが強くなった.このうち,vanillinはHTST,unknown compound(Kovats index l747)とunknown compound(Kovats index l757),はUHTで匂いが最も強くそれぞれの殺菌牛乳を特徴づける匂いと考えられた.
(4) 牛乳の匂いに強く関与する成分が香気量として必ずしも多いとはかぎらなかった.
(5) 各香気成分のFDファクターを主成分分析することで,各条件の牛乳を客観的に評価でき,UHT牛乳が加熱により生じた匂いが最も強いと位置づけられた.

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