日本食品科学工学会誌
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でん粉を添加した焼麩膨化組織の走査型電子顕微鏡を用いた微視的考察
焼麩の製造に関する基礎の研究(第7報)
村瀬 誠小堂 千亜紀並木 和子石田 欽一
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2000 年 47 巻 2 号 p. 85-91

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抄録

(1) でん粉粒子はグルテン繊維間に分散するので繊維の連続化とシート状の展開を妨害し,グルテンドウ中のグルテンは細分化された組織を形成する.粒構造をもたないα化でん粉は吸水率が大きいのでグルテンの水分を優先的に取り,塊を形成し,一部溶解してグルテンの構造を破壊する.粒構造を有しても吸水率が大きいα化でん粉や可溶性でん粉は水分バランスを不均一にし,グルテンドウの形成を困難にした.
(2) 細分化されたグルテンは焼成によって微細な膨化骨格を形成し,繊維間に分散したでん粉粒子が糊化してグルテン骨格を密閉し,独立した気泡を形成する.糊化しやすいでん粉ほど密閉性がよく,比容積は大きくなる.
(3) 合わせ粉として使用したでん粉の性状が異なっても焼成初期にグルテンドウから発生する水蒸気量はほとんど変わらず,比容積の差はでん粉の保水力の差を反映したものではなかった.
(4) 従って,加熱によって糊化しないでん粉は密閉気泡を形成できず,またα化でん粉はグルテンを包み,膨化を妨害するので焼麩の膨化を抑制した.
(5) 以上から,でん粉の粒構造はグルテンドウの形成を行う上で必要であり,焼成時に糊化することによってでん粉は焼麩の膨化を促進する.でん粉粒子表面のタンパク質の寄与については今後の検討課題である.

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