日本食品科学工学会誌
Online ISSN : 1881-6681
Print ISSN : 1341-027X
ISSN-L : 1341-027X
リンゴ果実の肥大生育時期における部位別無機成分の動向
リンゴの無機成分組成に関する研究(第5報)
岩根 敦子
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 47 巻 4 号 p. 317-326

詳細
抄録

リンゴ(品種'ふじ')の3樹を用い,生育期と無機成分の変動との関連を調査した.開花盛期後の3週から収穫適期25週まで2週間おきに生育期別・樹別に果実を採取した.
果実は,果皮,果肉,果芯,種子に分別し,果実生育過程の部位別の,無機成分(Na,K,Mg,Ca,Fe,Mn,Cu,Zn,P)を測定した.
(1) 果肉100g中の各無機成分含量は,開花盛期後の3週が最高で,収穫期の25週まで各成分の減少傾向は異なり,次のようなグループに分けられた.
Na,K,Fe,Cu,Pは3∼5週までの減少率は大きいが,7週から収穫期までは,ほぼ,一定値を示した.
Mg,Ca,Mnは3∼11週まで減少したが,その後は,ほぼ一定値を示した.
Znは生育全期間を通じて減少した.
(2) 果実1個当たり果肉の各無機成分含量は,生育に伴い上昇したが,各成分の増加の動向はそれぞれ異なっていた.
Na,K,Fe,Cu,Pは生育段階の進行に伴い急激に増大し,Mg,Ca,Mnは緩やかな増加傾向を示した.
(3) 銅殺菌剤の噴霧の影響は,果皮のみで認められた.
(4) 生育段階ごとの3樹間の各無機成分含量の変動が見られ,特に微量元素の変動幅が大であり,成熟果実でも同様に考えられた.
第六次改定栄養所要量では,Mn,Cu,Znの所要量も掲載されたが,特にFe,Mn,Cu,Znについては,変動幅の大きいことを考慮して,食品成分表の値を利用する必要があると考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top