2000 年 47 巻 4 号 p. 333-337
イチジク'蓬莱柿'の果実を5°Cと15°Cで保蔵した場合の糖およびポリウロニド含量の変化を調査した.15°Cで保蔵した果実は果皮色および果肉色の変化と硬度低下が早く,保蔵4日後までに急速に軟化したのに対し,5°Cで保蔵した果実は硬度の低下が緩やかであった.両区とも保蔵中にショ糖含量が減少したが,特に15°C区での減少量が大きく,全糖含量に占めるショ糖の割合も急速に低下した.一方,ポリウロニド含量は,15°C区では保蔵4日後までに熱水,EDTAおよび水酸化カリウム可溶性画分で著しく減少し,全ポリウロニド含量に占める水可溶性画分の割合が顕著に増加したが,5°C区では保蔵中,各画分ともほとんど変化しなかった.イチジク果実では,収穫後の保蔵温度が高い場合にはショ糖の分解が進むと同時に,急速な軟化に伴って細胞壁内の水不溶性ペクチン質が消失することが示唆された.