日本食品科学工学会誌
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ビタミンC水溶液の加温保管中に起こる分解と褐変に及ぼす各種糖質の影響
小関 宏明秋間 千春大橋 且明酒井 徹
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2001 年 48 巻 4 号 p. 268-276

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抄録

L-アスコルビン酸の20-1000mg/100mlの水溶液を,15% (w/v)の糖質(糖類と糖アルコール)の添加の有無の下で,40-0℃において3ヵ月間保管した.経時的にその一部を取り出し,総ビタミンC量と酸化型ビタミンCの含有量を測定した.また,同時に水溶液の褐変度を420mmでの吸光値の変化から検討し,さらに,加熱保管中における糖質の変化を高速液体クロマトグラフィーによって定量分析した.得られた結果は以下に述べるとおりである.
(1) 保管時間の経過に伴って,総ビタミンC量は減少したが,供試濃度が高いほど,保管温度が低いほど,さらに保管ガラス容器中の空気容量が少ないほど,その減少速度が抑えられた.
(2) 加熱保管に伴ってビタミンC水溶液は褐変化するが,加熱初期の間は褐変化とビタミンCの酸化分解の速度の間に正の相関があった.
(3) 保管中におけるビタミンCの酸化分解は,糖質の添加によって僅かに抑制され,一方,褐変化はフルクトース,スクロース,異性化糖,グルコースによって促進されるものの,糖アルコール類の影響は受けなかった.
(4) 同じ加温保管条件下において,グルコースやフルクトースおよび糖アルコール類はほとんど変化しないが,スクロースはフルクトースとグルコースに変化した.
(5) 同じ加温条件下において,フルクトースの一部を糖アルコール(マルチトール)に置き換えると,フルクトースによるビタミンCの褐変化の促進作用が抑制された.
以上の結果は,ビタミンCの褐変化は,Maillard様の反応生成物に起因し,還元性の糖類によって促進され,糖アルコール類で逆に抑制されることを示している.

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