日本食品科学工学会誌
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かつお節粉保存中における劣化臭成分の変化
かつお節香の形成および劣化に寄与度の高い成分変化のメカニズムの研究(第4報)
川口 宏和石黒 恭佑若林 秀彦深見 賢治上田 要一
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2002 年 49 巻 5 号 p. 312-319

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抄録

かつお節粉砕後の密閉保存におけるカルボニル化合物などの劣化臭成分の変化について検討し,以下の結果を得た.
(1) 条件を変えて保存した場合,-20℃ (24日間)で強い酸敗臭が発現したが,70℃ (4時間)では酸敗臭は弱く,弱い焦げ臭が発現した.25℃ (12日間)では酸敗臭が発現したが,その程度は-20℃の場合と比べて弱かった.
(2) -20℃ (24日間),25℃ (12日間)および70℃ (4時間)のいずれの条件において保存してもカルボニル化合物が増加したが,組成は異なっていた.-20℃ではヘキサナールなどの直鎖アルデヒド類が増加したが,70℃では直鎖アルデヒド類は検出されず,分枝鎖アルデヒド類やケトン類が増加した.25℃ではそれらの中間的な組成を示した.これは,保存中に脂質の酸化分解(一次反応)と共存成分との反応(二次反応)が同時に起こり,温度によってそれぞれの反応の起こりやすさが異なるためと考えられた.
(3) 保存中に生成した主な劣化臭成分は,酸素分子あるいは水分子中の酸素を取り込んで生成することを,18Oを使用した実験より確認した.
(4) 保存中に増加した各種カルボニル化合物の標準物質を粉砕直後のかつお節に添加して,香気特性への影響をみた結果,ヘキサナールなどの直鎖アルデヒド類により酸敗臭的香りが発現することを確認した.また,分枝鎖アルデヒド類やケトン類の影響は少ないと考えられた.

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