日本食品科学工学会誌
Online ISSN : 1881-6681
Print ISSN : 1341-027X
ISSN-L : 1341-027X
脱水によるワニエソ筋原繊維タンパク質の変性と水の状態に及ぼすキチン加水分解物添加の影響
山下 康充張 農野崎 征宣
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 49 巻 6 号 p. 368-376

詳細
抄録

キチンの低分子化と水溶性向上を図り,食品素材としての広範な利用に活路を見いだすことを目的として,タラバガニ,ウチワエビおよびヤリイカより調製したキチン加水分解物をMfに対して5%添加し,脱水に伴うMfの変性と脱水収着等温線を検討の結果,以下の結果を得た.
(1) 3種のキチン加水分解物の主要成分は糖質であり,(GlcNAc)1~5より構成されている混合物であった.
(2) キチン加水分解物を添加したMfの脱水収着等温線は,いずれも対照と比較して同一WにおけるAwが低下し,収着水量を増加させた.
(3) キチン加水分解物を添加したMfの脱水による変性は,いずれも対照と比較して全Aw域において抑制された.
(4) キチンの効果と比較して,キチン加水分解物は脱水変性抑制効果に改善が見られ,有効な天然物由来タンパク質脱水変性抑制物質であることが確認された.
(5) 以上の結果は,キチン加水分解物が添加されたことによってもたらされる,タンパク質周囲の水和層の安定化によるものであると考えられる.

著者関連情報
© 社団法人 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top