日本食品科学工学会誌
Online ISSN : 1881-6681
Print ISSN : 1341-027X
ISSN-L : 1341-027X
畜肉エキスにおける脂肪酸エステル類の抗菌効果
中山 素一藤本 章人樋口 彰渡辺 誠貞苅 季代子飯尾 雅嘉宮本 敬久
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 50 巻 11 号 p. 537-545

詳細
抄録

チキンエキス中における発芽率の高いB.cereusと発芽率の低いB.coagulansの2つの菌種について,本エキス中での種々の脂肪酸エステルの発芽,増殖抑制効果について検討した.その結果,発芽率の高いB.cereusに関しては,グリセリン脂肪酸エステルのうちHLBの低いMGで,構成脂肪酸そのものにも抗菌性があると報告されている短鎖,中鎖脂肪酸4)のうち最も疎水性の高いミリスチン酸で効果が高かった.一方,B.coagulansに関しては,ラウリン酸脂肪酸エステルの効果が高く,特に,MGのモノエステルの効果が高かった.菌種により,抗菌効果の有る脂肪酸エステルの種類や脂肪酸エステルの脂肪酸鎖長に違いがあるのは,作用機序が菌種により異なるためと考えられた.実際の食品の系で効果を示す脂肪酸エステルの構成脂肪酸鎖長は,培地中における試験で効果のある物とは異なることが多く,チキンエキスの主成分であるゼラチンの脂肪酸エステル類の抗菌効果に対する影響を調べるために,培地および緩衝液中での脂肪酸エステル類の添加試験を対照実験として行う必要があると考えている.また,先に述べたようにB.coagulansB.cereusでは,菌種の違いにより,効果の有る脂肪酸エステルおよびその作用機序が異なることが示された.このことから,実際の畜肉エキス製造にあたっては,エキスの種類毎に制御対象とする菌種を同定し,この後,エキスの種類毎に添加保存試験を行い,効果の有る脂肪酸エステルを選択して用いることが必要であると思われる.

著者関連情報
© 社団法人 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top