2003 年 50 巻 3 号 p. 122-132
1.試料米からDNAを抽出して鋳型とし,STS化プライマーあるいはそのセット共存下でPCRを行い,識別バンド出現の有無を1または0に2値化して説明変数とし,食味官能検査結果を目的変数とする重回帰分析を行い,米のDNA食味推定式を作成した.
2.同じ説明変数を使用し,目的変数として,食味ランキング等に基づく「食味評価値」あるいは米飯物性測定値を用いることによる別のPCR食味推定式を作成した.
3.これらのPCR食味推定式は,異なる年次の試料米などの未知試料に対しても比較的高い重相関係数を示し,適用性の高いことが示された.
4.PCR食味推定技術は,一粒の米粒や米飯粒を試料として食味の推定が可能,年次を越えて食味推定式の適用が可能,従来の官能検査,物理化学的測定値,分光学的測定値に基づく食味評価ともよく適合する様々な食味推定式の作成が可能,STS化プライマーの塩基配列が,今後の食味要因の解明や食味の分子育種の役立つ可能性がある,等の特色がある.