日本食品科学工学会誌
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加熱処理米粉糊液およびゲルの物理化学的特性
加熱処理米粉の調理・加工への利用(第2報)
高橋 徹三浦 靖小林 昭一
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2003 年 50 巻 5 号 p. 230-236

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抄録

無処理米粉(UT),乾熱処理米粉(HDT160)および湿熱処理米粉(HMT120)を用いて調製した10%(w/w)糊液ならびに20%(w/w)ゲルのレオロジー特性,X線回折,色特性,破断特性および糊化度測定から加熱処理が各特性に与える影響について検討した.
(1) 米粉糊液の動的粘弾性測定から,HDT160はUTおよびHMT120と比較して弾性的挙動を示すことが明らかとなった.また,各試料はHerschel-Bulkleyモデルで近似可能な降伏応力を持つ擬塑性流体であることが示されたが,HMT120は降伏応力および見かけの粘性率が他の試料よりも小さく,流動容易な糊化液であった.
(2) 調製直後のHMT120ゲルは,回折角2θ=17°付近のデンプンの規則構造に由来する回折ピーク,また,13°および19°付近のアミロース-脂質複合体形成を示す回折ピークを持つことがX線回折測定から明らかとなった.これらの回折ピークはUTおよびHDT160には見られなかった.湿熱処理はデンプンの内部構造を強固にし,加熱時におけるこれらの膨潤・糊化を抑制し,加熱耐性を付与する加熱方法であることが明らかとなった.
(3) HDT160およびHMT120ゲルは,UTと比較して破断ひずみが小さく,破断応力が大きい,硬く脆いゲルを形成した.また,これらはべたつきが少なく,餡と似た性状を持つことが示された.このような付加価値を有する米粉を用いた加工食品の開発が期待される.一方,加熱処理米粉の糊化度はUTよりも低く,保存初期における老化も速いことが明らかとなったが,これらを原材料に用いて製造した食品の物理化学的特性の解明が必要である.

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