日本食品科学工学会誌
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醤油粕より調製したイソフラボン分画物の抗酸化素材としての有用性
江崎 秀男渡部 綾子菱川 進弘大澤 俊彦川岸 舜朗
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2004 年 51 巻 1 号 p. 47-53

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抄録

醤油醸造における産業廃棄物である醤油粕中のイソフラボン類の定量を行うとともに,この粕より各種抽出物,また8-OHGおよび8-OHDを高濃度に含有する画分を調製し,その抗酸化的有効利用の可能性を検討した.
(1) 醤油もろみ中のイソフラボン類の粕への分配率は,約65∼95%を示した.ゲニステインの分配率が最も高く,これに次いで,ダイゼイン,8-OHG,8-OHDの順であった.
(2) 各醸造メーカーの醤油粕中のイソフラボン類の総和量は,溜り醤油の粕の方が多かった.8-OHGおよび8-OHDの含量はメーカーによって異なっていたが,ODIの総和量は最高で100gあたり約60mgであった.
(3) 醤油粕より調製したエタノール抽出物や酢酸エチル抽出物は,油系および水系における魚油の脂質過酸化を抑制した.8-OHGおよび8-OHDを高含量化したODI画分の抗酸化性はさらに強く,その活性はα-トコフェロール以上であった.
(4) これらの醤油粕分画物は,DPPHラジカル捕捉能を示すとともに,リポソームに対しても強い抗酸化性を発揮した.特にODI画分の活性は顕著に強かった.
以上の結果より,醤油粕より調製した分画物は種々の試験法で十分に抗酸化性を示すことが分かり,その有効利用の可能性が示唆された.またこの抗酸化性の発揮には,醤油粕中に多く残存する8-OHDや8-OHGが寄与するが,メラノイジンなどの各種抗酸化物質の関与も考えられる.

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