日本食品科学工学会誌
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スダチ果汁の酸素ガス加圧殺菌
村本 桂久田村 勝弘荒尾 俊明谷脇 孝典鈴木 良尚
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2004 年 51 巻 11 号 p. 604-612

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抄録

酵母に及ぼす加圧酸素ガスの致死作用とスダチ果汁の殺菌処理への応用について検討を行い,以下の結果を得た.
(1) YPD培地に懸濁した酵母(Saccharomyces cerevisiae IFO 10149)を酸素ガスで直接加圧すると,生菌数が減少し,生存率は圧力または温度を上げるに従い短時間で減少した.
(2) 酸素分圧が同じならば,全圧が変化しても酵母の死滅速度は変化しなかった.すなわち,溶存酸素濃度が酵母に致死的影響を及ぼすことがわかった.また,温度の影響も大きく,特に溶液の温度上昇に伴う酸化還元電位の増加は,生存率と高い相関関係(r=0.96)を示した.
(3) 加圧の際,攪拌することで,急速に酵母の生存率が低下した.スダチ果汁中に懸濁した酵母(Candidia boidinii SYM-1)は,30°C,5.0MPaで15分間,40°C,10.0MPaでは5分間,さらに加熱の効果も加わる50°Cでは,1分間以内で完全に殺菌できた.
(4) スダチ果汁成分への加圧酸素ガスの影響を調べた結果,40°C以下の条件では酵母の殺菌に伴いビタミンC含量も減少した.それに対し,50°CではビタミンCを残存させたまま酵母を殺菌することができた.さらに,香気成分であるD-リモネンや色調に大きな変化は認められず,加熱臭のない新鮮な香味を保持することができた.
(5) 酸素ガスで直接果汁を殺菌する方法は,比較的低い圧力(10MPa以下)で処理できることから,高圧殺菌処理(400MPa以上)と比べて装置,コストの面で効率的であり,多量の果汁を連続的に処理できる可能性が示された.

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