日本食品科学工学会誌
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遊離脂肪酸含量および抗変異原性に基づく味噌用麹菌の選択
渡辺 隆幸尾張 かおる堀 一之高橋 光一
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2004 年 51 巻 12 号 p. 698-702

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抄録

Trp-P-2にS9mixを加えSalmonella typhimurium TA98を用いたエイムス試験により,味噌の抗変異原活性の向上に役立つ麹菌株を検索した.
(1) 種麹メーカー所有の食品産業用実用株21株をそれぞれ単独に用いた味噌を製造,80%(v/v)メタノール抽出液の抗変異原活性を比較した.
(2) 供試株中,AOK139またはAOK139を用いた味噌の80%(v/v)メタノール抽出液の抗変異原活性が高かった.
(3) 最大の活性を示したAOK139を用いた味噌抽出液のIC50は対照の市販麹菌使用味噌抽出液の1/3程度であり,対照より明らかに高い活性を認めた.
(4) AOK139,AOK138を用いた味噌の遊離脂肪酸量は試験した味噌の中で最も多く,抗変異原性との関連が示唆された.
(5) 麹菌AOK139,AOK138使用味噌の脂質分解率の高さは米麹のリパーゼ活性およびセルラーゼ活性が他の菌株よりも高いことにより生じたことが示唆された.
以上の結果から,味噌製造時に強い脂質分解能力を示すAOK139,AOK138を用いることにより味噌の遊離脂肪酸量の増加,抗変異原性の向上が可能であることが明らかとなった.

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