日本食品科学工学会誌
Online ISSN : 1881-6681
Print ISSN : 1341-027X
ISSN-L : 1341-027X
セラミックMF膜によるパーシャル分解ペクチンを含有した清澄リンゴジュースの開発
原田 三郎鈴木 涼子谷猪 由紀城 斗志夫太田 英明渡辺 敦夫
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 51 巻 3 号 p. 123-130

詳細
抄録

セラミックMF膜を用いWSP入り無菌清澄リンゴ果汁を製造することを目的としてWSPの膜透過を検討し,以下の結果を得た.
(1) 原果汁のMF膜処理で清澄果汁にWSPを有効に含有させることはできなかった.WSPのなかで分子量が大きいものが膜で阻止され,これが分子量の小さいものまで膜透過を阻害するものとなるためであることが判明した.
(2) 20°C,5分間のペクチナーゼによる酵素反応でWSPのパーシャル分解が可能であり,WSPは約(70∼90)%を残存させることができた.
(3) パーシャル分解した果汁のWSPはMF膜ろ過で清澄果汁側へ有効に含有させることができた.WSPのMF膜透過には,クロスフロー線速よりもろ過圧力が大きく影響することが判明し,線速(1∼2)m/sで生ずる圧力損失のみをろ過圧とした操作が有効であった.
(4) パーシャル分解果汁から得られた清澄果汁は,分子量(100000∼200000)にピークを有するWSPを(110∼190)mg/L含有し,100日間の常温保存では二次沈殿(おり)が発生しないことが分かった.
以上のことから,ペクチン含有清澄リンゴ果汁を膜分離技術で製造するには,酵素による低温・短時間のパーシャル分解が有効であり,この方法によって目的を達成することができた.

著者関連情報
© 社団法人 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top